ウェブライター 初心者の中には
「今のクライアントの担当さんが赤をたくさん入れてくれて勉強になる!」
と考えている人もいるようだ。いるようだ、というかよくそんな投稿を見かける。
もちろん馴れ合いの中でそういうやりとりもありなのかもしれないが、少なくともお金をもらって文章を書くプロだという自覚を持っているのであれば、客先から勉強させてもらおうという姿勢にはいささか疑問が残る。
正しいスタンスとしては、こんなに赤を入れられてしまったからには、次からは絶対に修正の数を減らすように勉強しよう、努力しよう、ではなかろうか。
というのが問題だということは今更言うまでもないが、筆者としてこの話で気になるのは、実は別のところにある。
それは
修正された箇所の修正内容は、本当に正しいのか?
という問題だ。
個人的な経験から言えば、ウェブメディアの大手を除いて、文章のプロが「編集」を名乗っていることは比較的少ない。もっと言えば、編集の人ってどこで何を勉強してきたのか、疑問ですらある。
それが露呈したのが、例のWELQ事件だろう。知らない人は一度調べてみるといい。数年前だから、現役ライターの中でも知らない人がいるかもしれない。これは、医療系のポータルサイトがコピペ記事を乱立して、検索上位を独占したという事件だ。
この事件を解明していく中で、インターンの学生が「編集担当」となりクラウドソーシングでコピペ記事をウェブライターに書かせていたという事実が判明している。
もちろんそれは極端な例なのだろうが、そういうレベルで編集担当を名乗っている人は、いまだにいる。筆者は生徒さんたちの記事をチェックすることがあり、それに対する編集担当を名乗る人からのフィードバックを見る機会も多いのだが、やたらと赤を入れてくる人のチェック内容は、だいたいがおかしい。個人的な好みをフィードバックしてくる上にその内容がまったく正しくない。
だから、あなたのクライアントの編集担当の文章レベルは、過信してはならない。
仕事としてはクライアントの指示だから、それに対して反発しても仕事が終わらず面倒になるから「ハイハイ」と対応しておくのが正解だが、それが正しい修正内容だ、ああこんな書き方をするんだ、などと鵜呑みにするのは危険だ。ましてや、ありがたがるようなものではない。
全部が全部そう、というわけではなく、真っ当な編集担当の方もいることだろう。
しかし、彼ら彼女らがどのくらい「編集」として訓練されてきたかは、ウェブメディアに限って言えば甚だ疑問だ。なぜならまだウェブメディアというのは、産まれたばかりで、誰もがまだ十分な経験を積んでいないからだ。
その中でも真っ当と言えるのは、おそらく従来の紙媒体を発している出版社が監修しているサイトのみと言っても良い。紙媒体メディアであれば従来の出版プロセスの編集作業の歴史も積み重ねられており、ノウハウも豊富だ。しかしポッと出のウェブメディアの多くは、そのようなノウハウは皆無だ。
ライティングを含めたSEOのテクニカルなノウハウは持っているところもあるが、本来のライティングノウハウ、編集ノウハウを学ぶ機会はなかったようだ。
前述のWELQにしても、運営会社は超メジャーなIT系企業だ。そんな超大手でさえコンプライアンスに欠けた編集方法で問題を拡大し、WELQ自体は消滅したものの姉妹サイトは大手出版社の監修のもと再出発したという事実が、ウェブメディアの現状をよく表している。
今回は別にウェブメディアの編集を云々言っているわけではない。管理、編集する組織も、そして文章を書くライターも、ともにまだまだ未熟な業界であり、手を取り合って業界を育てていくべき時期なのだ。
そしてライターは、ライターとしてきちんとした仕事を責任もって果たすつもりであれば、クライアントのチェックで勉強になったなどと自慢するべきではない。プロとしての自覚を持って、責任ある仕事をするマインドこそが、これからのウェブライターに求められ、ウェブライターとしてサバイブするための必須条件であるということを覚えておいたほうが良いだろう。
イラスト:りぴ